改 革 の 柱 1
筋肉質な弁護士会への転換
私たちが落とすのは贅肉です。増えすぎた委員会、量産される意見書、紙と会議で回る事務──会員の時間と会費を食い、意思決定を鈍らせているものです。太くするのは核です。資格審査と綱紀・懲戒、研修とOJT、市民の紛争解決インフラ、若手の業務基盤。筋肉質な弁護士会とは、やせ細った会ではなく、動ける会のことです。
この考えに立って、私たちは次の改革を構想しています。
- 会務の全面棚卸しと委員会の統廃合──当会には現在、約48の委員会・センターがあり、協議会等を含めれば60を超えます。すべての委員会・特別組織に設置期限を付す「サンセット原則」を導入し、3年以内に会内組織数の3割削減を目指す。
- 委員のかけもち制限と若手無償動員の是正──会務は、少数の会員の献身に依存しない設計に改める。
- 意見書・声明の精選──会名義の意見書・会長声明を、司法制度・弁護士制度の根幹、弁護士自治、基本的人権の擁護に直結する事項に精選し、質と発信力を高める。
- 会費の引下げと財政の透明化──会務統廃合による支出削減を原資とする一般会費の引下げ、若手減額の恒久化・拡充、委員会・事業ごとのコスト開示を進める。
- 会務のDX・AI化──委員会運営のオンライン化・ペーパーレス化を徹底し、定型業務にAIを導入する。会自身がAIを使いこなし、その知見を会員向け研修に還元する。
- 会の役割の限定列挙──①資格審査と綱紀・懲戒、②研修とOJT、③市民のための紛争解決インフラ、④会員の業務基盤の支援。この四つに含まれない事業は、廃止・移管・外部化を原則として検討する。
改 革 の 柱 2
弁護士自治の堅持
弁護士自治は弁護士の特権ではなく、市民が国家と争うときの最後の防壁です。そして、肥大した会務と重い会費への不満が会の内側から自治の正統性を掘り崩すことこそ、私たちが最も警戒する事態です。筋肉質な弁護士会への転換は、自治を守るための戦略そのものだと考えます。
- 綱紀・懲戒への資源集中──手続の人員・予算を増強し、審査の長期化を解消する。市民に見える自治の質こそ、自治堅持の最大の論拠です。
- 濫用的懲戒請求への毅然たる対応──濫用への対応を制度化し、標的とされた会員を会として支援する。
- 非弁・非弁提携対策の強化──72条を潜脱する事業スキームへの調査・警告を強化する。
- 会員の出口と再出発の支援──心身の疲弊などで続けられなくなった会員が、手持ちの事件と預り金を抱えたまま動けなくなることは、依頼者の不利益と不祥事の温床になります。会が次の四つを支えます。①事件の引継ぎ支援(受任事件の棚卸し、引継ぎ先の候補提示、預り金の精算と記録返還への立会い、万一に備えた承継先の事前登録)。②休む・縮める選択肢(新規受任を止めて手持ち事件を片付ける縮小期間、療養中の会費減免、相談が懲戒の端緒にならない秘密厳守の相談窓口)。③セカンドキャリアへの橋渡し(企業内・公務などへの転身のキャリア相談と情報提供)。④再チャレンジの支援(休業・育児・介護・転職からの復帰者向けの復帰前研修、共同受任による段階的な復帰、復帰初年度の会費減額、休んだことを経歴の傷にしない運営)。
- AI時代の弁護士法72条──「排除の論理」から「品質保証の論理」へ。法務省ガイドラインの動向を追跡して当会の解釈指針を発信し、AI事業者との対話により「弁護士の関与を組み込んだサービス設計」を市場の標準にしていく。
改 革 の 柱 3 【 最 重 要 課 題 】
若手の業務基盤の確立
経験5年未満の所得中央値は300万円。支援メニューは増え続けているのに、若手の経済的基盤は細り続けています。当会会員の52.5%が64期以降の若手である以上、これは「若手向け施策」ではなく、会の存続そのものに関わる、会全体の課題です。
- AI格差を生まない──AIリテラシー研修を標準科目とし、若手には無償で提供する。リーガルAIツールの共同調達・優待利用を事業者と交渉し、実務に即した利用指針と相談窓口を整備する。
- 業務領域の開拓──窓口を作って待つのではなく、依頼者に出会う経路を会が組織的につくる。中身と料金を示した定型サービス(中小企業の契約・労務の健康診断、スタートアップの規約・資本政策チェック等)を用意し、税理士・社労士・金融機関・商工団体・自治体・学校など紹介してくれる側に「弁護士につなぐ目安」を届け、結果を返す。スクールロイヤーや自治体の外部専門職など制度化された役職の受け皿となり、企業内弁護士との発注・受注の場もつくる。1分野・1連携先で小さく試し、紹介件数・受任率・紹介元の満足度で効果を検証して広げる。
- 共同受任の制度化──業務開拓・事件の引継ぎ・縮小期・復帰のどの段階でも使える共通の仕組みとして、共同受任を会の制度にする。型は四つ──育成型(経験者が監修し若手が実務を担う)、承継型(しばらく共同で担当してから主担当を交代する)、分担型(負担を分け合う)、伴走型(復帰者を経験者が支える)。会は登録名簿と複数候補の提示(輪番を含む)、委任契約・弁護士間覚書のひな形、業務分担に応じた報酬配分の目安を整え、経験者側の協力には手当や研修単位で報いる。終了後の振り返りで名簿と制度を毎年見直す。
- OJTと知の伝承──チューター制度・班制度を実働の仕組みへ強化し、共同受任を実地の学びの場とする。倫理と自治の来歴の継承を研修の必修とする。
- 負担の軽減──会費の若手減額の恒久化・拡充、会務負担の適正化、孤立しがちな若手のための相談体制(業務・経営・心身の健康)の常設。
- 谷間世代への対応──新65期から70期までの約1万1,000人、全法曹の約4分の1に及ぶ不平等です。日弁連における是正措置の実現を求め続け、当会独自の支援を継続する。
そ の 先 へ
日弁連への向き合い方
私たちの構想には、当会単独で決定できるもの(改革の柱1〜3の大部分)と、日弁連や国の決定を要するものとが混在しています。この区別を曖昧にしたまま改革を語ることは、誠実ではありません。
| 決定レベル | 主な項目 |
|---|---|
| 当会単独で決定できる | 委員会統廃合・サンセット原則、当会会費と財政開示、意見書精選、会務のDX・AI化、AI研修無償提供、業務開拓連携、共同受任制度、会員の出口と再出発の支援、チューター・班制度、綱紀・懲戒の体制増強 |
| 日弁連の決定を要する | 日弁連会費・特別会費の水準、日弁連の本部・委員会のスリム化、谷間世代への是正措置、法曹人口政策、生成AI利用指針の全国標準化、懲戒制度・綱紀審査の制度枠組み |
| 国の決定を要する | 弁護士法72条の解釈運用、裁判IT化・ODRの制度設計、司法修習給付の拡充 |
※表は横にスクロールできます。
当会の会員は全国の弁護士の約16%。日弁連の意思決定に対して、当会は傍観者ではなく構造上の当事者です。私たちは日弁連との関係を「対決」でも「追従」でもなく建設的な牽制役と位置づけ、次の方針を構想しています。
- 当会を改革の実証例(ショーケース)に──委員会3割削減・財政開示・会務のAI化を先に実行し、結果を数字で示したうえで日弁連に同じ改革を提案する。実績を伴う提案こそ、説得力を持ちます。
- 日弁連のスリム化と財政規律──本部等へのサンセット条項導入、意見書精選、会費のさらなる引下げ、事業別コスト開示を理事会で継続的に求める。求める内容は、当会が自ら実行済みのものに限る。
- AI・72条問題の議論を主導──当会の解釈指針を全国標準のたたき台として提案する。
- 東京三会・関弁連との共同戦線──谷間世代の是正措置と若手施策は、若手比率の高い都市部の会と足並みをそろえて提案を続ける。
- 日弁連の議論の透明化──理事会で何が審議され、当会がどう発言したかを会員に定期報告する。透明化は、自治を内側から守る仕事の一部です。
改 革 の 道 筋
最初の1年、そして3年
数値目標は「再編の規律」を明確にするためのもの。達成状況を毎年度検証して公表する運営を、私たちは構想しています。
最 初 の 1 年
最初の1年で着手できること
- 全委員会・会内組織の棚卸し調査と、統廃合計画(サンセット条項を含む)の策定・公表
- 委員会・事業別コストの財政開示の開始
- AIリテラシー研修の研修体系への組み込みと若手無償化、リーガルAIツールの共同調達交渉の開始
- 業務開拓の試行(1分野・1連携先での定型サービスと紹介ルートの運用、効果測定)
- 共同受任制度(育成・承継・分担・伴走)の設計と試行、名簿・契約ひな形・報酬配分の目安の整備
- 事件引継ぎ支援窓口と、秘密厳守の会員相談窓口の設置
- チューター制度・班制度の実質化改革
- 綱紀・懲戒部門の体制増強と審査期間の目標設定
- AIと弁護士法72条に関する当会解釈指針の検討会議の設置
- 日弁連理事会・東京三会会長会議でのサンセット条項導入・意見書精選・会費規律の提案
- 日弁連理事会での審議状況と当会の発言の会員向け定期報告の開始
3 年 後
3年で実現をめざすこと
- 会内組織数の3割削減と、それを原資とする一般会費引下げの総会決定
- 若手会費減額の恒久制度化
- 会務事務のペーパーレス・AI化の完了と、事務局コストの構造的削減
- AI研修の全会員への浸透と、共同調達スキームの本格運用
- 業務開拓の対象分野・連携先の拡大と、紹介件数・受任率の公表(毎年度)
- 共同受任制度の本格運用と、件数・継続率・依頼者満足度の公表
- 会員の出口と再出発の支援(引継ぎ・縮小期間・復帰支援)の制度化
- 72条解釈指針の発信と、AI事業者・関係機関との常設対話枠組みの確立、日弁連標準への採用提案
- 東京三会・関弁連との共同による谷間世代是正措置の日弁連提案の継続と、日弁連のスリム化・会費引下げ議論の定着
※ここに掲げた各項目は、総会・常議員会の審議、会規・会則の改正手続、財政状況を踏まえて具体化されるべきものです。